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2008
09.24

二章-安らぎ-

Category: SS
「・・・記憶喪失?」

滅多に聞くことがない言葉につい聞き返してしまった。

「はい。恐らく精神的な負荷が原因かと・・・」
「自分のことや何があったのか・・・殆ど思い出せないそうです」
「唯一自分の名前だけは覚えてるのですが」

そう話すのはメディカルセンターの看護士。
怪我の治療のほか精神的なケアも受け持ちハンターズからの信頼は絶大だ。
しかし、そんな彼女も今回ばかりは表情が曇っていた。

「申し訳ありません・・・。私たちではどうしようも・・・」

彼女に責任なんてある訳が無い。
むしろ・・・もっと早く救助に来れなかった自分の責任。
もう少し早く駆けつけることが出来ればセリスの母親が死ぬ事はなかったかもしれない。
自分の不甲斐なさが情けなかった。

「あの・・・御自分を責めないでください。貴方がいなければあの娘も助からなかったのですから・・・」

「・・・ありがとうございます」

彼女の言うとおりだ。
何時までも悔やんでいても仕方がない。

「あの娘・・・セリスの記憶はどうすれば戻るんでしょうか?」

「恐らく母親が目の前で殺された事が原因でしょうから・・・」
「彼女の心がもう思い出したくないって忘れたいって記憶に鍵をかけてしまったんでしょう」

無理もない。
9歳の女の子が突然目の前で自分の母親を殺されて平気な訳がない。
自分だってあの時の光景は忘れたい・・・無かった事にしたい。

「・・・事実を伝えない方が幸せなんでしょうか」

「今は避けた方がいいと思います。彼女も記憶をなくして動揺してますし・・・」
「でも、大切な記憶を失ったまま生き続けるのは悲しいと思います」

「分かりました。この事を打ち明けるかは・・・今後決めたいと思います」

「はい、また何かあったら何時でもきてください」
「あ・・・それと」

会話を終え、今まさに歩き始めようとした矢先に止められる。
既に後ろを向いていたのでくるりと回転。


「何か?」

「事件のせいかもしれませんが、少し男性に対して恐怖感を抱いているので注意してください」
「ちょっとした事でパニックになるかも知れませんから」

・・・それは自分が行く事自体不味い気もするけど。
会わない訳にもいかないので、気をつけることにしよう。

「はい分かりました」

看護士に別れを告げるとセリスがいる病室へと向かう。
部屋を向かう間際・・・あの人・・・リーダーと出会った。

「あ、イル君。君もセリスちゃんのとこかな?」

「ええ・・・そうですけど、リーダーも?」

「うん。ちょいと挨拶してきたよ~。リーダーとして♪」

「リーダーとして?」

何か嫌な予感がするのは気のせいですか。

「うん。だってこれから仲間になる娘だから。リーダーが挨拶するのは当然でしょ?」

「・・・・・・は?」

今なんと言った?
誰が?何の?仲間になるって??

「だから~。これからセリスちゃんは私たちのチームの仲間になるの!」

「はあ!?」

前々から突拍子もないことを言う人だというのは重々承知している。
そして一度言い出したら押し通す人であることも知っている。
だが・・・。

「あの娘はあんなに幼いんですよ!?それに戦い方も知らない民間人なのにどうして!」
「第一記憶を失ってて本人も動揺してるこんな時に・・・!」

「別に戦うだけがハンターズじゃないでしょ?危なかったら私たちが守ればいいんだし☆」

「ですが・・・そんな急に・・・」

「イル君!!」

急に大声で怒鳴られて思わず固まってしまう。
怒鳴ったリーダーの顔は険しい顔つきだった。

「イル君はセリスちゃんのお母さんから全て託されたんでしょ?」

直前まで怒鳴り声だった声のトーンが下がり表情もすぐに柔らかいものとなる。
リーダーの・・・この顔は冗談なんて欠片も無い時の顔。
こうなったら自分はただ聞いてるしかない。

「君がハンターズである以上、セリスちゃんとは一緒にはいられない」

・・・確かに。
ハンターズは危険な任務が多いため極力一般人との交流を避けなければならない。
ましてや子供と一緒に行動するなんて許可が出るわけもない。

「だから・・・形式だけでもハンターズライセンスを取ったの」
「そうすれば一緒にいてあげられるでしょ?」

実のところハンターズには年齢、性別、種族の制限などは一切ない。
来る者も去る者も自由なところ。故に子供であってもライセンスを取ることは容易だ。
何故か月額でライセンス料を搾取されるけど。

「一緒にいてあげなさい。あの娘にはもう貴方しかいないんだから」

真っ直ぐと自分を捉える瞳。その瞳に抗う術も、意味もない。

「・・・はい」

「うん、良いお返事♪」

あっという間に何時もの顔に戻る。この豹変っぷりには感心する。
もっとも普段の豹変は大抵損害をこうむる訳だが・・・。

「それじゃ、私は行くから。セリスちゃんによろしくね」

「はい、それでは失礼します」

まあ、今回はそんな事はなかった・・・

「ああ、そうそう、セリスちゃん退院したらイル君のお部屋で暮らしてもらうからねぇ~!」

もとい、あった。

「・・・そういう事は先に言っておいてください~!!」

別れ際の一言にとんでもない事を言い残していく辺り流石はリーダーだ・・・。
嫌じゃないけど・・・女の子と二人で暮らすなんて初体験なんですが。

ああ、女の子が来てもいいように掃除しなきゃ・・・。
その前にベッドをもう一つに生活用品も揃えなきゃ・・・。
そもそも女の子ってどういう生活してるんだろ?
ぬいぐるみとか可愛い物を揃えなきゃならないんだろうか?

そんな事を考えつつセリスが入院してる個室へと向かう。

「・・・ここか」

こんこんとドアを叩く。部屋の中から少し慌てたような女の子の声がする。

「・・・!ど、どうぞ」

「どうぞ」と言う割にはあんまり落ち着いていないような気もするが・・・。
しかし言われたのに入らないわけには行かないので素直に入る。

「あ・・・」

ベッドにちょこんと座った少女の瞳がまっすぐに自分を見つめる。
その瞳はどこか虚ろで儚げで。

「初めまして、セリスさん・・・と言った方が良いかな?ハンターズのイルです。以後お見知りおきを」

「・・・イル様?先程の女性から聞きました。私を助けてくれたって・・・」

自分の正体を知ってセリスは少し落ちついた様子だった。

「ああ、もう聞いてるんだね。調子はどうかな?」

「は、はい。大丈夫です。そ、それよりも助けていただき本当にありがとうございました」

落ち着いたかと思えばすぐに慌てる、緊張と恥ずかしさと色々な感情が入り混じった声で
精一杯の感謝の気持ちを伝えてくる。

「気にしなくて良いよ。ハンターズとして当然の事をしたまでだしね」

また少し落ち着く。
見ていて中々面白い・・・と思ったら失礼だろうな。

「えっと・・・イル様、よろしければお聞きしたい事があるんですけど・・・」

と、そんな事を考えていたら何時の間にか真剣な表情になったセリスが問いかける。

「ん、何?」

「あの・・・私は森で倒れてたんですよね?」
「私何も覚えてなくて・・・イル様は何か知っている事とかありますか・・・?」

「・・・・・・」

いきなり直球・・・か。
自分だって彼女の状況に置かれたらこう問い掛けるだろうけど。

「看護士の方や先程来た女性の方にも聞いたんですけど、わからないって」
「でも、私・・・何もわからなくて・・・それが怖いんです」

俯いて小刻みに震えて。
自分の事が何も分からないと言う恐怖は自分には計り知れない。

「君は盗賊に襲われてて、ちょうどその時に僕が通りかかったんだよ」

セリスの訴えに対して真実を告げる。

「幸いすぐに撃退できたんだけど、怖かったんだろうね、君はすぐに気を失ったんだよ」

彼女にとって一番重要な点を除いて。

「・・・それだけ、ですか?」

悲しげな瞳を自分に向ける。

「・・・うん、僕が見たのはそれだけだよ」

本当はすぐにでも教えてあげたい。
君に何があったのか。君の母親が最後に残した言葉を、君に向けた笑顔を思い出して欲しい。

でも、それは出来ない。
今の君はきっと受け入れられない、受け入れ難い事実だろうから。
そんな儚げで今にも消えてしまいそうな君には教える事が出来ない。

「そう、なんだ・・・」
「・・・私って捨てられちゃったのかな?」

「な!」

想像してなかった言葉に思わず声を上げる。
何で・・・どうして?

「だって!それならどうして森に一人でいたんですか!?」
「どうして誰も迎えに来てくれないんですか!?」
「私はここにいるのに!!」
「きっと・・・私の家族なんて皆私のこと嫌いなんだ・・・!!」

誰が・・・誰が捨てるって?
そんな事ない、絶対に!!

「違うっ!!!!」

「ひうっ!?」

気がつけばセリスの両肩を掴んで怒鳴っていた。

「そんな・・・捨てられたとか嫌われた何て軽々しく言うなっ!!」
「何も判らないのに・・・そんな事二度と言うな!!!」

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」

酷く震え涙を流して謝罪するセリスを見て漸く自分のやってる事に気がついた。

「・・・あ!ご、ごめん、そんなつもりじゃ・・・」

慌てて両手を離し離れる。
あれ程注意されてたのに・・・。

「い、いえ、いいんです、わ、私が悪いんだから・・・」

怯えを隠せない声色で言葉を紡ぐ。
それっきり黙りきってしまう。

違う・・・違うんだ、君を怒鳴りたかったんじゃない。
自分が言いたかったのは・・・。

「・・・・・・そんな事無いよ」

「え・・・」

自分の発した言葉に不思議そうな顔をするセリス。
そう・・・違うんだ。

「君のご家族はそんな人たちじゃないよ・・・きっと」

きっとなんかじゃない。
君の母親は誰よりも君を愛していて、誰よりも君の幸せを願ってた。

「・・・どうして、わかるんですか?」

「・・・君を見てれば分かるよ」

でも、やっぱり今の君のは言えそうも無い。

「私を・・・?」

「嫌われてたなら、捨てられてたなら、そんなに可愛い女の子になってないよ」

だから嘘を言う。

「愛されてたから、大切にされてたから君は綺麗で、可愛いくて素敵な娘になれたんだよ」

ありきたりで馬鹿みたいな嘘を。

「今でも君の事を心から想っているはずさ」

「そう・・・なのかな」

「きっとそうだよ・・・だから今は元気になる事だけ考えよう?」

「・・・はい」

少しだけ、ほんの少しだけ笑顔を見せてくれた。
こんな安っぽい嘘でも信じてくれる純粋なセリス。

綺麗で、可愛くて、優しくて、健気で、儚げで。
頼まれたからじゃないけど・・・誰よりも幸せになって欲しい。
だからあんな悲しい事を言わないでほしい。
だからあんな悲しい顔をしないでほしい。
君は誰よりも愛されて、誰よりも幸せを願ってもらっているんだから。

「・・・そうだ、君に言っておかないといけない事があったんだっけ」

あの約束が守れるか分からないけど。

「・・・?何ですか?」

その手助けが出来るなら僕はそばにいよう。

「君が・・・セリスが退院したら僕の部屋で暮らす事になってるんだけど・・・」

君がとびっきりの笑顔を見せてくれるまで。
誰よりも幸せになるまで。

「え・・・」

そして何時か本当の事を言おう。
君の大切な人が君に何を残していったのかを。

「・・・嫌かな?」
「勿論リーダーが勝手に決めた事みたいだから、今なら変えられると思うよ」

その時君は何て言うだろう。
怒るだろうか、悲しむだろうか。

「・・・いえ、それで構いません」

例え嫌われても構わない。
例え僕のそばからいなくなっても構わない。

「えと・・・私イル様と一緒の方がいい・・・です」

「・・・ありがとう」

それで君が幸せになれるのなら。

「大丈夫だよ、もう両肩掴む何て事はしないから」

「・・・本当ですか?」

「あれ、信用まるでなし?」

「ふふ・・・だってまだ今日お話したばっかりですから」

「それじゃ、信頼を得られるように頑張るかな?」

「はい、頑張ってくださいね?」

その笑顔が何時までも消えないように。

「それじゃ、これからよろしくね?セリス」

「・・・はい!よろしくおねがいします!」

今日からは僕が君の家族になるから。続きを読む
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2007
03.31

封印されし記憶 一章-記憶-

Category: SS
「・・・・・もうこんな時間か」

時計を見れば既に深夜2時。少しばかり遅くなってしまった。

「そろそろ寝るかね・・・」

布団に潜ろうとした時ガチャリと扉が開いた。

「・・・・・・お父様」

「セリスか?どうしたこんな時間に」

「・・・今日はお父様と一緒に寝てもいですか」

「震えてる娘を見て断るほど私は冷酷ではないので」

脅える様に震える身体を抱えるようにして現れた娘をほうっておける訳が無い。
今すぐに抱きしめてやりたい。
・・・と思ったが恥ずかしいのでそれは言わないでおこう。

そう告げるとモソモソと布団に潜り込んで来た。

その体は小刻みに震えていて。

「・・・またあの夢か?」

「・・・・・・・・・・」

最近見なくなったかと思えばやはりそう簡単に忘れさせてはくれないらしい。

「・・・どんなに同じ夢を見てもあの人のことは思い出せません」

「顔も、名前も、姿も」

「覚えているのは私を助けようとする声とナイフが振り下ろされる瞬間だけ」

あの日・・・5年前のあの日。

忘れたくても忘れる事など出来ないだろう。

私も・・・セリスも。

「お父様は・・・私の傍からいなくなりませんよね・・・?」

語りかける瞳は酷く儚く脆いもの。

「ああ・・・だからもう眠りなさい」

「ん・・・・・」

そう言うと安心したのか眠りについた。
その娘の頭を優しく撫でてやる。

「・・・5年前、か」

あの日もこんな静かな夜だった。
だからこそ思い出してしまう。

-あの惨劇の夜を-

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「・・・これはひょっとするとアレ・・・ですか?」

時刻は既に深夜の2時近く。
何時もなら仲間と馬鹿騒ぎ疲れで眠りこけてる筈。
なのに・・・なのに・・・。

「14歳にもなって迷子デスカ」

大見得きって自分ひとりで帰るなんて言ったのがマズかった。
迷子になりました~何て助けを求めるのはあまりにも恥ずかしい。

「ココハドコデスカ」

見た事も無い森の中。
月の光も届かない深淵の静寂。
右も左もわからない。

「・・・もう少し歩いてみますかね」
「イザとなればメールすりゃいんだし・・・」

しかし・・・あの人のことだ、今頃今か今かと自分からの連絡を待ち侘びているだろう。

「あはは、やっぱイル君迷子になったね♪」

想像するだけであの人の幻聴が聞こえてくる。
あの人に笑われるのは良い。
だが・・・もし借りでも作ろう物なら・・・・・。

「・・・・・・絶対連絡しない」
「・・・・・・絶対一人で帰る!」

自分の事をマスコット代わりに「可愛がる」あの人のネタにはされたくない。
そう思って先を急ぐがやはり道は開けないわけで。

「どうしたもんですかね・・・」

ため息をつきながら天を仰ぐ。
其処にはうっすらと輝く月の光。

「綺麗だな・・・」

本来なら「恐怖の存在」である筈の闇と静寂。
でも今は月明かりと静かな夜風のおかげで不思議なくらいに穏やかな気持ちになれた。

あの声を聞くまでは。


「いやああああああああ!!!!!!」

「だれか・・・だれかあああああ!!!!」

「!!」

静寂の森に響いた悲鳴と「何か」を切り裂く音。
その「声と音は」さほど遠くない。

・・・こんな所に人が?
そんな事言ってる場合じゃないか・・・!

腰に提げた剣を抜き声と音のした方へと向かう。
自分でも判るほど心拍数が上がっていた。

「落ち着け・・・落ち着け!」
「実戦は何度もやってるだろ・・・・・!」

本当なら逃げたい。自分の実力なんてたかが知れてるから。
でもあの声を聞いて逃げ出すなんて出来る訳が無い。

「無事でいてくれよ・・・」

その思いは適うことは無かった。

視界には座り込んで涙を流し脅える少女とナイフを持ちながら歩み寄る男が2人。
傍にはおびただしい血を流し倒れ微動だにしない女性が一人。

「あんた達・・・そこで何をやっている!?」

聞かなくても判ること。
それでも、怒鳴らないわけには行かない。

「あん?何だぁボウズ・・・。俺達の邪魔するのかぁ?」

「見られたからには仕方ねぇ・・・お前にも死んでもらうか」

一人は如何にも「ゴロツキです」と言うような奴。
もう一人は「人殺ししてます」と宣言しているような奴。

しかし・・・大した実力ではない。

「悪いけど・・・あんた等に渡す命は無いんでね・・・!」

意識を集中させ手元に炎をイメージする。
下級魔法だがその威力を馬鹿にしてはならない。

「テクニック・・・!?テメェ、ハンターズか!!」
「ヤバイッすよ・・・!仲間でも呼ばれたら・・・!!」

あ、そうか。あの人達を呼べば良かったか。
・・・でも助けを求めるほどの敵じゃあない。

「ちっ・・・!覚えてやがれ!!」

如何にもチンピラらしい捨て台詞を残して退散していく。

「・・・とりあえず、写真は本部に後らせてもらうから」

これで朝・・・早ければ数時間もすればあっという間に拘束されるだろう。
ハンターズは信用第一なのでこういう事は素早い。
・・・それよりも今は。

「・・・お母様・・・?」

ユサユサと動かない女性を揺する。

「・・・・・・・・・・・・」

見れば判る。もう助かる命ではないと。
それでも少女は揺する手を止めない。
少女の手が触れるたび赤い液体が少女を汚す。

「・・・・・・あ」

少女の手を止めさせ。意識をもう一度手元に集中させ女性へ向ける。
ニューマン程では無いが回復の法は心得がある。

しかし、傷がいえることは無い。
これで癒せるのは命が絶えるほどではない傷だけ。

ハンターである自分がこんな傷を癒すのは到底無理な話だ。
だけど・・・だけど。

「お母様・・・お母様ぁ・・・」

涙を流して綺麗な顔をグチャグチャにして女性を見つめる少女を見て
無理だからと諦めたくは無かった。

でも・・・無理なものは無理だった。
だから・・・言った。まだ息がある今のうちに。

「・・・俺に、何か出来ることはありますか?」

「え・・・?」

何を言ってるのか判らない。
そんな顔で私を見つめる少女。

「少しでも・・・安心して旅立てる様に・・・出来る限りのことはします」

「・・・・!!!!」

その顔が悲しみから絶望へと変わる。
それでも言葉を止めるわけにはいかない。

「何か・・・ありますか?」

その問い女性がかすかに顔を上げた。
血まみれの顔で懇願するように口を開く。

「どうか・・・どうかこの娘を・・・セリスをお願いします」
「私は十分に生きました・・・でもこの娘はまだ幼い・・・」

「だから・・・どうかこの娘を幸せにしてやってください・・・」
「ずっと・・・傍にいてあげて・・・守ってやってください・・・」

自分は14歳。腕も未熟だ。だからこんなか弱い女の娘を守る力なんて無い。
でも言ってしまった以上聞いてあげない訳にはいかない。

「判りました。この娘は俺が必ず守り抜きます。だから・・・。」
「だから安心してお眠りください」

同情かもしれない。安請け合いかもしれない。
でも、約束したからには絶対に守る・・・。そう誓った。

「・・・・・いや・・・いや・・・」

壊れた機械のように首を横にふり続ける少女・・・セリス。
涙を流し続けるセリスを母親が抱きしめる。

「ごめんね・・・セリス・・・。私はもう貴方と一緒にはいられないの・・・」
「でも、これからはこの方が貴方の傍にいてくれるわ・・・。だから安心して・・・?」

「お母様ぁ・・・おかあさまぁ・・・」

共に涙を流し続ける二人にかけられる言葉など、無い。

「幸せに生きてね・・・?わたしの・・・可愛いセリ・・・ス」

最後の言葉は掻き消えるほど小さいもので。
ゆっくりと・・・女性の体が少女から離れる。

「・・・・・お母様?」

ユサユサ

「おかあ・・・さま・・・」

ユサユサ

何度揺すっても、何度声をかけても2度と反応は無い。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや」
「いや・・・・いやぁ・・・・」


「いやああああああああああああああああああ!!!!!!!」


俺はこの声を忘れることは出来ないだろう。

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・・・はい!と言う訳で以前からお話していたセリスとの出会い話のSSで御座いますw
何だか最初から重苦しいお話ですみませんです。
文章が変なのも下手と言う事でご了承下さい(マテ

一応設定としましてはセリスが元々PSOと言うオンラインゲームで作ったキャラなんです。
だから微妙にSS中にPSO用語が出てきますのでw
テクニックは魔法、ニューマンは人種ハンターは職業です。
まあ、そんなに専門用語は出さない予定なので大丈夫かとw
あと何か私が美化されてるのは私もPSOのキャラとして出ているからです。
つーかあれくらい出来ないと話が成り立たないですし・・・(笑
SSでは私はこういうキャラということを覚えておいていただけると幸いです。

残りはあと1話か2話の予定。つまんないかも知れませんがお付き合い下さいw(ぇ

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